炭焼き

炭焼きの概要

鉄山林・鉄山所

●大炭・小炭を生産し、焼木など樵る山。場書には鑪・大鍛冶設置、鉄穴流しも条件に入れることがある。契約には次回の鑪建築用として栗など一定本数伐り残す条件を入れることが多い。■明治15年「大近藤鉄山林箇所記」では郡内184箇所。■今?郡内に200ヶ所余りで、内、鑪の設置出来る鉄山林は80〜90ヶ所。

 

大炭

●爐の砂鉄を熔解還元させるために用いる炭で、炭化不十分なものがよいとされる。●30年位に生長した濶葉樹を伐採し、土窯で薫焼する。ひと窯に生木4500貫位入れ、炭は約二割得られる。山子は1ヶ月1000貫内外焼く。炭窯は集材上1カ年に二回場所をかえる。■大炭に適しない木は、しで・こぶし・桜・椎・栃・適するのは松・栗・槙・深山ではぶな。

 

小炭

●雑木の枝条を積んで燃やし、頃を見計らって土砂をかけて消火する。生木から一割とれる。大鍛冶の左下鉄・錬鉄に使用。■消費量は錬鉄ひと吹に九合から一升。■明治中〜後期、近藤家各鉄山では小割鉄一束(13.5貫目)に三升内外消費しているが、年間200石も使う鉄山もあった。■炭籠に入れて背負って帰るが、出火することがあるのでその夜は蔵入れしない。

 

小炭焼

■細木でも根伐りしない。槙の木の枝で割木となるものは樵(きこ)らぬ。山子は大炭の他、小炭も月一斗五升焼くこと。■よく焼く者は二日役に鍛冶屋一軒遣いは焼く。■よい季節は春と秋、老人・若年・子供も焼きに行かせること。

 

小炭枡

■直径・高さとも二尺五寸の胴返し籠に一杯を一升とする。■計量のため、籠の側面に10分の1ずつの切れ目(一合穴)をつける。

 

越し炭

●買い受けた山で生産した炭を、他の山の鑪へ運ぶこと。その山を懸山とも言う。

 

炭釜

●山の谷間に打つが、截り木が谷口へ轉び落込む所を上の場とする。釜床は山を掘込み、双方に石垣を仕回し、錬土を積上げる。

 



御立山・御建山・水立山

●領内藩管理の山林。防風林・水源涵養などの保安林的性格もある。成木に従って地元民、鉄山への払い下げもなされた。

 

小炭山

●小炭山場割は山配するが、半月も焼ける所を選ぶ。若樹山がよく、松・栗・栃などは至極上。

 

手山

●自己の経営する鉄山。

 

内林 

●個人持・村中惣持の山林。樹木伐採のときは郡奉行の聞届必要。

 

陽山 ひやま

●南向のよく日の当る山。

 

返し切

●大炭となる雑木は、樹令30年位になると伐採するが、この時期は萌芽力が盛んで、切ってもまた再び成木となる。鉄山林ではこの萌芽を切り取ること(返し切)は禁止された。



山子

●製炭(炭焼き)夫。鉄山直属の抱山子と村方山子がある。■日野郡菅福山(近藤家鉄山)では67人雇用。自宅に帰らぬ山籠り山子も居た。■小炭も月に一斗五升焼くことが課せられ、大炭は炭釜から道まで朝夕二荷ずつ負い出す。焼灰木も、回り持ちで伐り出す。■また欠間として後吹を、また若者は番子を勤めた。

  

小炭頭勤方

●小炭頭は山配の助役。●何役に限らず、休番の者を山配と打合せ小炭焼に行かせる。吹雪、大積雪のときは、先立って山に行き、若年、老人には火を焚付けてやる。梅雨頃は雨天に木栫えして晴天に焼かせる。 

 道夫

●大炭焼釜までの道打夫。釜一枚に何人必要かを見込む。

 

 山番

●鉄山林の管理を鉄山師から委託された人。所の山に委しい村人が指名され、扶持米を受ける。

 

山奉行

●在中奉行は郡奉行の配下。■御立山御立藪の管理の他に、領内の治安維持、国境番所の管理にあたる。