鉄山稼議定
●鉄山師と村方間の協定。■内容は山内遣い水、村方から炭・焼木・笹・茅などの納入単価、村方人別日雇賃、高殿建築労働力の合力、生産米買取、下ごえ引取、抱子の墓・茶園の場所、山・川狩禁止、なりそ(植物の果実)取り禁止、手馬使用と飼料場、抱子と村方人別の交際禁止、残漕捨場、越し炭(他鉄山への搬出炭)の有無、駄賃、道橋つけ場など。
合持(あいもち)
●鉄山林や鉄穴場の諸権利などを共同所有すること。特に奥日野に多い。所有歩合は、押立柱四本を基準とすることが多い。
組合稼・仲間稼
●数人共同の鉄山稼。諸仕入金と生産手段を他の鉄山師から借り受けて経営し、産鉄の何割かを渡す方式が多い。村方と鉄山師の共同経営もある。
鉄穴借受議定
●文化6(1809)年、近藤家日野町横路八人合持鉄穴借受けの支払諸条件。
■借受期間を7年間とし、銀400匁。畑井手敷料一人二匁。井手懸り一町に二匁。鉄穴水先き通し料は、取小鉄の一割。走り一町に四匁。石ばね場料年間米五升。足水料は相対ぎめ。小鉄場床料・鉄穴師居小屋・雪隠敷地料として年間米一石。鉄穴師扶持米は当村の米を買うことなど。
手馬・手馬制度
●鉄山の諸荷物運送専用馬。●馬子は鉄山師より馬の購入代金を借り、仕業日は日当の6割が手取、4割は借入金に当てる。■一鉄山数匹から30匹位まで。冬の飼料は鉄山持ち。
馬銀
●鉄山専用馬としての手馬制度では、馬の買入代金数両を予め鉄山師より借入れて、日当の六〜七割を手取りとし、後は借用金返済にあてた。
跡稼(あとかせぎ)
●たたら生産に一区切りつけた鉄山師の生産手段を譲り受けて、その跡(後)を別の鉄山師が経営すること。抱子(従業員)も一緒に譲り受けることが多い。
平し米(ならしまい)
●抱子養米として鑪打込の村の産米を、毎年定まった石数だけ買入契約すること。
酒貸し
●鉄山師の統制下におかれ自由な飲酒は許されなかった。大鍛冶職人への酒貸しは、大工五合、左下三合、手子・吹差し二合までとされたが、特別出精者には追加貸しを許されるなど、酒貸しは奨労、褒賞的な意味合いを持つ。本小屋でも手代は一日一合のみ、客人があっても相伴は不可。
鉄山相場・山相場
●賃金の支払い相場。山内抱子への仕業賃支払は、一般通用金銀銭より安い相場でなされた。また願米・はね米を納升で受取り、抱子へは古升で渡し、直段は鉄山相場で売った。■理由は抱子多数に多額の金を無利子で貸していると共に、退身者などの貸銀が回収出来ないためとしている。
出職算用帳
●山内職人の手間賃などの収入と、食料品などの支出を帳簿上で操作。多くの職人は借方となった。
碁盤帳
●山方職人の出勤を見届けるため、山内支配人は毎朝山内を見回り、基盤目の帳面に記入。仕業の終り頃再び回り、仕業に出たふりをして休んだ者へは米貸しを五合へらす。大鍛冶は拾い出し帳を使用。
貸米
●扶持米は4日ごとに、男は日に一升、女二合、子供のある女三合、子供二合の割りで貸す。 ●米貸日は竹貝を吹き知らせる。
心付米
●大鍛冶職人が定められた仕事を満たすと褒章として米つき五升、120吹に五升、160吹に五升、計一斗五升与えた。
捨扶持
●金銭支払を必要としない米の支給。年老いた親などに与えられる心付など。
大鍛冶職人への手当
●六吹は本役、七吹目は賃銭払い、八吹目以上は直ちに賃銭払い。●明治期も本役以上の吹数には直ちに賃銭を支払ったので、毎日小額貨幣の用意が必要であった。
身上り祝
●鍛冶職人で10日間勤務ごとに一人役、100日間で10人役与えられ、役を酒にかえることも出来たが、一人役で三合、五人役で三升、十人役で五升引換。
成捨
●村下・大工など雇用するとき、一定期間(5〜10年)誠実に勤務することを条件に金を貸す(多くて35両)が、その期間中無事に務めると貸金の返済を免除する制度。手代にも同義の制度があった。
友吟味
●関係者全員で身改める。
喰捨
●就労時の食事は扶持の一部として無料とする待遇。
懸切
●賃労働するとき、食事は自己持とすること。
透間稼
●農民が農閑期に鉄穴流し、炭焼、馬方などで稼ぐこと。
過(貸し)上
●賃銀計算上、黒字で生活物資の買える状況。逆は喰負(くいおい)。
喰負い
●支給の手間賃を越える米などの借入状態。■喰負の者は、余分の仕事をしてかえす。従わぬ者は立替銀を取立てた後、暇を出す。山子の喰負は生木伐賃の七割は手取、後三割は米の借入金に回す。
返りこ証文
●山林・田畑・鉄穴などの資産売渡し証文に、代金を返済すれば、それら資産を返却する旨の記載がある証文。
ふづくり
●身分は雇用主に属するが、事情あって借金を完済して何年かの暇をとり、他の鉄山へ出稼すること。相互の鉄山で、合意書を交換する。
先銀
●納入物資代金の何割かを予め貸し与えること。村山子の大炭、砂鉄納入その他に適用された。
引当物
●先銀を渡すときの抵当物件。
当物(あてもの)
●借入金の抵当物件。
床役料
●建物、敷地の使用料。
難波船手当
●難波船による鉄の損失は毎年数件あったが、江戸回鉄では鉄一駄につき正銀2匁ずつ、破舟・沈舟の手当てとして積み立てた。難波の浜では海からの回収荷物「荷打浦方改」の費用がかかる。
仲間持寄り入札
●大阪でお互いに手持過不足の鉄を、問屋・仲買人が数店集まり売買すること。
差金売
●近藤家売鉄で外商に出かけたとき、掛売でなく即金支払を言う。
地売
●近藤家大阪出店が割鉄を道中売でなく、地元である大阪・京都あたりに売り捌くときの言い方。
道中売
●近藤家には大阪出店に、大阪から江戸までの東海道筋、其他の街道に沿う仲買商を回って鉄を売捌く外商担当者がいた。店の周辺での販売は「地売」。
庭払
●鉄問屋・仲買人の店頭で鉄類を売ることをさす。
庭渡し
●大鍛冶の仕業を11吹以上すれば、増賃を当日または翌日現金で渡すこと。慶応元年には、増座に繰入れて、必要に応じ支出することにしたが、実質は明治になっても庭渡しが多かった。
歩溜り
●地鉄の何割が割鉄製品となるかの歩合で六割二分五厘が目標とされた。
漬(つけ)
●破産。鉄山運営資金繰りがつかず、鑪生産を放棄する。職人への貸付金回収が不能となり、また山の生木も多く伐り残し、村方よりの納入物資代金も未払となるので全資産を失うことになる。
前引
●資金繰りの目途が立たず次第に経営困難になること。
不印
●需要が衰えて、捌方が思わしくないこと。
銀詰
●鉄山稼業では諸仕入品など先銀(先払い)が慣例であるが、それ等の資金繰りの見込がたたぬこと。
押え
●予定していた下限の価値を下回る入札のとき売却を断ること。広島官鉄放出のときよく用いる言葉。
懸り合い
●金銭の縺(もつ)れ,土地・境界などで紛争となること。