地球誕生の時、重い鉄は地球の中心部に沈み込み、その大部分は地核に存在し、鉄は地球の総質量の3分の1を占めています。地表にある鉄は酸化されたもの(酸化鉄)で、鉄鉱床としてあったり、磁鉄鉱として岩石(火成岩)の中に存在し、人類はこれらを利用して鉄を作り、利用してきました。
【地球の含有元素比率】
鉄 34.6%
酸素 29.5%
ケイ素 15.2%
マグネシウム 12.7%
ニッケル その他 2.4%
鉄は、地上にふんだんにあって頑強。熱でいろんな物に加工でき、壊れたり錆びたりしてもリサイクルが可能。このような性質の鉄があったからこそ、人類は今日のような文明を手にできました。
ちなみに「石器時代」から「鉄器時代」への移行を想像してみてください。鉄は道具の素材として人々の暮らしを豊かにする一方、強靱な武器として使われることもあり、「鉄」を持っているかどうかで力の優劣が生じ、社会の仕組みにも大きな影響を及ぼしてきました。
◆自然冶金説(偶然できた鉄を利用)
鉄鉱石の鉱床地帯で発生した森林火災によって、偶然でき た鉄を加工したのではないかという説。
◆隕鉄採取説(隕石を鉄として利用)
地球に降り注ぐ隕石は年間に約 2000 個。大昔には、加熱 して叩くと延伸性があり、強靱な刃物になるこれらの隕石 を鉄として使ったとする説。
こうした長い長い時代を経て、便利で有益な鉄を人類が自ら作ることができるようになったのは、いまからわずか3700〜3800年前のこと。日本で「たたら製鉄」が始まったのは1500年ほど前なのです。
B.C.1700年頃、メソポタミア地方の北、アナトリア高原で、ヒッタイト民族が鉄の精錬技術を駆使して武器や戦車を作り、ヒッタイト王国を築いたと言われています。付近では 鉄鉱石が豊富に産出し、更に多くの製鉄遺跡が発見されており、製鉄について記したヒッタイト語の粘土板文書も発掘されています。
しかし近年、カマン・カレホユック遺跡で鉄滓(ノロ)が発見され、ヒッタイト以前の紀元前18世紀頃に鉄があったことが明らかにされました。この発見によって、ヒッタイトが人類で初めて製鉄を行ったという定説が揺らぎ、彼らは既に認識されていた鉄の生産方法を改良し、強靭な鋼を一定量確保するための生産方法を、新たに確立したのではないかという見直しがなされ始めています。
初期の製鉄炉は木炭と鉱石を層状に装入して、ふいごなどで空気を送って燃焼させ、そのとき生じる一酸化炭素(CO)によって酸化鉄を還元したものと思われます。
ヒッタイト滅亡後はタタール人にその技術が引き継がれ、それが中国大陸(アイアンロード)を経て日本にも伝わりました。
●「タタール」は「たたら」の語源とも言われています。
製鉄の原理をカンタンに言えば、高温状態で炭素(C)や一酸化炭素(CO)によって、鉄鉱石などの酸化鉄(FeO)に含まれる酸素を除去して、鉄を残すことです。
高温の製鉄炉内に一酸化炭素を発生させ、一酸化炭素が安定した二酸化炭素になるために、酸化鉄の酸素を奪うということで、これを「還元」と言います。
反対に、モノが酸素と反応して、燃えたり錆びたりする現象を「酸化」と言います。
製鉄は、還元反応という「化学的プロセス」であるとともに、もう一方、そうした還元プロセスの中で、炭素が鉄の中に取り込まれることによって、人間にとって役に立つ“鉄”となるプロセス」でもあります。
炭素は製鉄過程において
(a)「高温状態」を作り出す熱源
(b)「酸化鉄を還元する」還元材
(c)「有用物(商品)としての鉄」を構成する材料(添加物)
という三つの役割を果たしています。
そのため製鉄過程では大量の石炭(or 木炭)が消費されることになるのです。