さ行(さ〜そ)


細鉄

●爐・大鍛冶また鉄池などの周辺に散乱している銑・鋼の細片。女子供が拾って床地(金床)などの材料とした。

 

茶園

●野菜畑のこと。山内に住む人の食料として、村人の同意を得た場所につくる。明治後期には、山内各戸で畑をつくる。

 

境鉄山融通会所

●産鉄流通を促すため、天保6(1835)年、在御用場支配の下に境に設立された。文久2(1862)年、為替貸与をして鉄を集荷するため、鉄類預所をおき、世話人として近藤平右衛門、野坂金次郎、青砥直太郎を任命。

 

坂越

●領内から他領へ物資を移出すること。米・鉄など統制下におかれた。

 

先銀

●納入物資代金の何割かを予め貸し与えること。村山子の大炭、砂鉄納入その他に適用された。

 

酒貸し

●鉄山師の統制下におかれ自由な飲酒は許されなかった。大鍛冶職人への酒貸しは、大工五合、左下三合、手子・吹差し二合までとされたが、特別出精者には追加貸しを許されるなど、酒貸しは奨労、褒賞的な意味合いを持つ。本小屋でも手代は一日一合のみ、客人があっても相伴は不可。

 

左下(さげ)

●銑を火久保(火窪)で熱し、炭などの雑挟物を除き、同時に含炭量を減らして本場に回す地鉄をつくる職人。作業場を左下場と言い、出来た鉄を下げ鉄と言った。

 

左下場

●長さ2.5尺内外、幅1.3尺、深さ0.7〜0.8尺の火窪の長側の一端より、粘土管で造った羽口で送風し、燃料は小炭を使い、火窪に銑を凡そ80貫、アーチ形に積み熱して、酸化焔で脱炭作業をする。下げ(左下)鉄は床底に沈積し、粗鬆なる粘塊となる。これを引出して手鎚で砕き、小塊として本場に移す。銑鉄の全炭素量3.5%中、三分の二を脱炭し、残りは約1.5%内外となる。これは鋼の炭素量と同じ。左下場での鉄の損失は5%内外。

 

砂鉱採取法

●鑪打込や、溜池、鉄穴井手等の施設をつくる計画があるとき、土地所有者は、貸与、または売却を拒否することが出来ないことを法律化したもの。明治26年4月施行。

 

差金売

●近藤家売鉄で外商に出かけたとき、掛売でなく即金支払を言う。

 

差越米

●他領で経営する鉄山の養米を、自国から津出しすることについては、藩の許可を必要とした。

 

指図板

●爐床の幅をきめる幅5寸内外の二枚の板。縦にならべてこれを窯の中通りとする。■明治33年の多里新屋山銑押指図、中央7寸5分・両端5寸。明治40年の日野町菅福山鋼押中央7寸3分・両端5寸。

 

砂鉄

●山陰・山陽の分水山脈及び支脈の花崗岩系岩石が風化して、崩壊し易くなった部分で百分の一内外含有し、水利の便利なところを選んで採取。中国山地系の砂鉄は挟雑物中最も有害な銅を含まず、硫黄も百分の一以下、燐も赤目は千分の一、真砂は万分の一内外。

 

三郡地払所

●智頭・若桜と共に日野郡(溝口周辺一部除く)の貢米は、領内百姓町人、鉄山、酒屋を願人として売出し、銀にかえて納めた。

 

残槽・残雑

●主として鉱滓。捨場は村方と協議。

 

山内

●広さ一町二反前後の土地に、鑪生産施設と就業者の集団生活の場があった。本小屋手代5〜6人、職人数拾人とその家族が住んだ。村方との交際は禁じられ、外出は許可制、門番もいた。居家は小割長屋。

 

三湊・三港

●近藤家の為登鉄類出荷港。米子(境)・玉島・岡山港。


塩噌

●塩と味噌。手間賃あてに貸したが、扶持の一部ともする。■貸付日は5・15・25日の三日間で時間は竹貝を吹き知らせる。山子のみは5・20日の二日。

 

下場

●砂鉄精洗場。上流から大池・中池・乙池とあり、更に樋で精洗することもある。

 

下灰

●炉を新設する際、炉の下の水分を除去するために行う作業。●桧の板の上で木を揉み火を出して、この火で本床の上で割木凡そ400〜500貫焚き、これを槍の柄大の生木長さ三尋ばかりのもの(しなえ)で一方に四人宛、両方より連打して打ち平ろめ、これを四回くりかえし終る。爐床は丸樋形にする。

 

島根日用

●明治中期頃雇用された、島根県からの鑪場建築大工集団。

 

下小屋・小割長屋

●山内居住の手代と、職人及び家族の住宅。

 

借区開坑願

●鉱物国有化(明治5年)により、鉄穴流し、川砂採取とも国から鉱区を借りて採取する旨の願書。

 

宗門改

●抱子の宗門改は、鉄山師が引請けて役所に請合う。

 

出職算用帳

●山内職人の手間賃などの収入と、食料品などの支出を帳簿上で操作。多くの職人は借方となった。

 

宗門人別放手形・宗門引越手形

●在所の寺から向方の寺へ、本人何宗で拙寺旦那であるが、何所に引越願うので当方除籍、貴寺御宗帳に加えてほしい旨の依頼状。返答書は宗門人別受取手形。

 

砂味

●目白より少し下等の鋼。

 

宗門出職手形

●他領に出稼するとき、先方の寺へ出す檀家寺の証明。

 

商法会議所

●明治12年3月、大阪高麗橋3丁目に設立。商業(鉄業)取締役に近藤喜兵衛、名越愛助を任命。

 

上鉧(じょうけら)

●どう場の鋼塊を仕上げして、上等の鋼を折地(玉鋼)、下等を上鉧と称した。上鉧は大鍛冶場に回す質の悪い鋼で、最終的に錬鉄にする。

 

証合・性合

●小割鉄がよく鍛錬してあり、雑挟物がぬけ、目合が揃っているかどうかを破断面からみた判断。

 

新田師・地形新田師

●土地造成工事人。


透間稼

●農民が農閑期に鉄穴流し、炭焼、馬方などで稼ぐこと。

 

銑(ずく)

●鑪の爐で還元された炭素分を多く含む鉄。●流し出した銑鉄は、少し冷やしてから屋外に出し鉄池に投じる。大塊・小塊もあるが、鎚で3〜5貫目に砕き、錬鉄や鋳物の原料とする。

 

銑押(ずくおし)

●赤目砂鉄を原料とし、操業は初日の窯造りを除いて四昼夜連続する。四日目は爐壁が薄く3〜6cmとなるので爐をこわして造りなおす。出来る銑鉄は4〜6t。

 

捨尾師

●床釣場(炉の下の地下構造)を堀りあげて、最下部に排水のため並べる直径30-40cm位の石(捨尾)を据える職人。

 

捨扶持

●金銭支払を必要としない米の支給。年老いた親などに与えられる心付など。

 

砂湛轉役人夫(すなさらえ てんやくにんぶ)

●会見郡日野川流域(下流)に堆積した鉄穴流しの廃砂は、(上流の)日野郡の責任で排除することになり、郡内各戸一名ずつの出夫を要求されたが、代わりの人夫賃を出して会見郡の人夫で済ますこともあったので轉役ともいわれた。

 

炭釜

●山の谷間に打つが、截り木が谷口へ轉び落込む所を上の場とする。釜床は山を掘込み、双方に石垣を仕回し、錬土を積上げる。

 

炭坂

●副村下。上を司る村下は首座。下を司る炭板は次座。

 

炭焚

●爐に大炭を投入する二人の工夫。

 

炭取

●爐や、鍛冶の火久保に投入する炭の入れ物。普通竹で編むが木製もある。


成敗

●鉄山師は藩の治政より独立して、無籍の抱子に対し刑罰権、宗門改実地権をもつ。抱子の懲らしめは、鉄蔵に閉じ込めるのが一般的。

 

雪隠(せっちん)

●便所。山内茶園に使用した下肥の残りは村人に払い下げる。建物は村方で造ることが多い。

 

千割鉄

●鍛冶で普通小割にする四本を割らないでそのまま角に延ばした鉄。日役で24本つくるが11本で一束とするが上。


添水

●鉄穴流しで、本流の井手に他の水源から水を引き入れること。

 

束(そく)

●鉄類出荷量単位で、一束は13貫500匁。二束で1駄。

 

造粉

●鋼造で細片化した鋼の粉。